患者の生活実験室

白血病患者(寛解中)が能動的な患者として楽しく暮らしていくために試した諸々と、医療や身体に関する本の読書記録

【本】どこからが病気なの?(市原真)

どういう状態になったら病院に行く判断をしたらいいのか?どの時点から医療に身を委ねるべきなのか?そのボーダーを判断する材料をくれる本。医療はチーム戦、孤独が治療の最大の敵という著者の言葉はまさにという感じだ。かぜと肺炎の違い、アトピーは体質…

【徒然】胆石アラーム

白血病が寛解したわたしは、胆石持ちとなった。合併症やステロイドの長期服用により、年単位で代謝が悪かったせいである。コレステロールや中性脂肪の値がずっと高かったのだ。暴飲暴食というわけでなくても胆石というのは、予防薬を飲んでいたとしても、ま…

【本】死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者(小堀鷗一郎)

外科医として40年間勤務したのち、2005年から在宅医療に関わるようになった小堀鷗一郎医師の処女作。サブタイトルの355人は、著者が訪問医として看取ってきた人々だ。在宅医療の過渡期に患者としてその最期を過ごしてきた人々。彼らひとりひとりへの回想が…

【徒然】運命は変えられるか

池江璃花子選手が、東京オリンピックの日本代表選手に内定した。素晴らしいことだ。心から応援したい。内定決定時に彼女が涙とともに述べた「努力は報われると思った」が、本心からの言葉なのは疑いようもない。自国開催のオリンピックのエースと目されるな…

【徒然】病衣の機能性について

長期入院患者にとって、着るものは重要だ。横になっている時間が長い上に、点滴などにつながれていることが多いので、快適なかつ機能的な寝間着が必須なのだ。その意味で、多くの病院が有料貸与している「病衣」は、大変機能的であると思う。www.askul.co.jp…

【徒然】日時計しかない現代のへや

わたしはきちんと日記や記録をつけていけるような人間ではない。とはいえ、長期入院者の常だと思うが、いろいろと思うことは出てくる。特に無菌室は一人でいる時間がとても長いので、考えずともさまざまなよしなしごとが勝手に頭に浮かんでくるのだ。 それに…

【徒然】フローサイトメトリーからわかったこと

フローサイトメトリーなる解析方法があることを知った。主治医が教えてくれたのだ。 発病から2年半が経ち、白血病とその治療に関すること、その過程で自分に起こること、なされることはだいたい理解してきたつもりだ。しかし、わたしの知っていることなど、…

【入院ref】ボディーソープasお見舞い品のすすめ

お見舞い品の選択はなかなか難しいものだ。その人に喜んでもらう、ということだけでは選ぶことができない。症状や治療での制限などをかいくぐる必要がある。 そのなかで、わたしの経験上、これをもらうとどんな状態であっても嬉しいというものがある。 使い…

【徒然】薬局で待つということ

薬局に行くとたいてい、なんでこんなに時間がかかるんやとか、 待たせすぎやろ、速くする努力もせんのかとか、 そういう言葉を薬剤師さんに投げつけたり、ぶつぶつ言っている人がいる。 たいてい高齢者だ。 今日もそのような人が隣にいた。 あまりに腹が立っ…

【徒然】患者にもっと柑橘を!

久しぶりにはっさくを食べた。 実にしみじみといただいた。 というのも、入院中そして退院後も長期に渡り免疫抑制剤を内服していたわたしには、飲み合わせの関係でしばらく柑橘類の多くが禁止されていたのだ。 グレープフルーツに関しては比較的知られている…

【本】無菌室ふたりぽっち(今田俊)

闘病ブログを書かれたり、闘病記を出版されたりする患者さんのことはとても尊敬している。病床での日々を記録していくとは、しんどかった時の記憶をたどって言葉にするということだ。しかも、自分以外の人にもわかりやすいように書く。体力以上に気力。わた…

【本】美しい距離(山崎ナオコーラ)

「でも、痛くないのか?痛くないのか?って 、...何度も聞かれて、どうしてそんなにしつこく尋ねるんだろう、と不思議に感じた。他人の痛み、ってそんなに興味深いことなんだろうか」 「痛くないことはない。でも、痛いから不幸だ、という風には思っていない…

【徒然】無菌室で何を食べるか

わたしが入院中に聞いて戦慄した話がある。 ある血液疾患の患者さんが退院し、しばらく経った頃にヨーグルトを食べた。その結果ビフィズス菌に感染し、緊急搬送された。 またある患者さんは、退院してしばらくした頃に海へ行った。海水に足を浸けただけだっ…

【徒然】痛覚よ、姿を

半年ぶりの骨髄検査。 白血病患者には定番の検査だ。穿刺と生検があり、今回は穿刺。 結果はまだだが、感触としては大きな異常はなさそうでほっとしている。 痛いんでしょとよく聞かれる。 痛い。 まず麻酔注射が痛い。 痛み止めなのになぜ痛いんだろうと思…

【徒然】わたしの骨髄移植、そしてチャリティー

わたしは白血病の治療に当たって、いわゆる骨髄移植を2回受けた。 いわゆるというのは、これは正確には「造血幹細胞移植」、つまり、血液を作り出す細胞「造血幹細胞」を「移植」する方法のうちのひとつだからだ。ドナーさんの造血幹細胞を、骨髄からの採…

【本】食べることと出すこと(頭木弘樹)

あえて言うが、コロナ禍になったことで、生きやすくなったと感じる患者はわたしだけではないのではないだろうか。徹底した除菌の習慣。努力や自分の一存でどうにもならないこともあるという諦観。個食や否応なしのひきこもり生活。患者にとっては当たり前の…

【徒然】患者の学習ノート

白血病に罹患して良かったことがあるとすれば、本屋で必ず医療コーナーに寄る習慣ができたことだ。一度治療が始まると、その過程で自分が関与できることは限られる。すなわち疑問は医師や看護師に聞いて解決し納得して進むこと、自身の状態をよく観察して彼…

【本】病名がつかない「からだの不調」とどうつき合うか(津田篤太郎)

(045)病名がつかない「からだの不調」とどうつき合うか (ポプラ新書) 作者:津田 篤太郎 発売日: 2014/11/04 メディア: 新書 上橋菜穂子さんとの往復書簡『ほの暗い永久から出でて』で津田篤太郎医師の思考と教養の深さに感服し、他に著書はないかと探したと…

【本】ほの暗い永久から出でて(上橋菜穂子・津田篤太郎)

ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話 (文春文庫) 作者:菜穂子, 上橋,篤太郎, 津田 発売日: 2020/09/02 メディア: 文庫 母親を看取った作家・上橋菜穂子氏が、その過程を見守った聖路加病院の津田篤太郎医師と交わした往復書簡。津田医師は、西洋医学と…

【本】家庭の医学(レベッカ・ブラウン)

家庭の医学 作者:レベッカ・ブラウン 発売日: 2002/10/10 メディア: 単行本 アメリカ人作家レベッカ・ブラウンによる、がんを患った母親を看取るまでの介護記。ノンフィクションなのだが、ブラウンが主に小説を書いてきた作家であるためか、不思議な語りの距…

【本】僕は日本でたったひとりのチベット医になった(小川康)

僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと 作者:小川康 発売日: 2014/08/23 メディア: Kindle版 チベット医学の総本山・チベット医学大学に、外国人として初めて正式入学した小川康氏の体験記。「みずから山に入って採…

【本】うつ病九段(先崎学)

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春文庫) 作者:先崎 学 発売日: 2020/07/08 メディア: Kindle版 将棋漫画『3月のライオン』を監修したプロ棋士・先崎学九段が、突然うつになった。精神科医の兄に導かれ治療を開始、1年間の休場を余儀なくさ…

【本】医療探偵「総合診療医」(山中克郎)

医療探偵「総合診療医」~原因不明の症状を読み解く~ (光文社新書) 作者:山中 克郎 発売日: 2016/08/12 メディア: Kindle版 総合診療医の先駆的存在である山中医師による、総合診療の紹介。器官で分けるのではなく、心身の症状を文字通り総合的に観察し、そ…

【本】森の人々(ハニヤ・ヤナギハラ)

森の人々 作者:ハニヤ・ヤナギハラ 発売日: 2016/09/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) 「セレネ症候群」。免疫学者ペリーナに、栄光と破滅をもたらした疾患。1995年。有名科学者ペリーナは、性的虐待の容疑で逮捕される。そこで友人に勧められ、刑務所で…

【本】人生最後のご馳走(青山ゆみこ)

人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫) 作者:青山 ゆみこ 発売日: 2019/09/19 メディア: 文庫 大阪の淀川キリスト教病院のホスピスには、「リクエスト食」という制度がある。毎週土曜日の夜に向けて、食べたいものを前日にリクエストできるのだ。人生の終わりを迎え…

【本】やさしくなりたい(野地洋介・編)

nodimaaaare.thebase.in 心臓発作を起こし、その後も身体的不安を抱えることになった編集者・野地洋介氏によるzine。病気で片目を失明したラッパーや幼少期に病弱だった医者など、身体のままならなさを経験してきた人達の寄稿やインタビューで構成されている…

【本】お釈迦さまの薬箱(太瑞知見)

お釈迦さまの薬箱 作者:太瑞 知見 発売日: 2015/04/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) 日本で唯一、チベット医の資格を持っている小川康氏の推薦本。著者の太瑞知見師は薬剤師であり、曹洞宗のご住職でもある。お釈迦様が定めた仏教の規則を律蔵と言うそ…

【本】<いのち>とがん(坂井律子)

〈いのち〉とがん: 患者となって考えたこと (岩波新書) 作者:律子, 坂井 発売日: 2019/02/21 メディア: 新書 筆者はNHKのプロデューサーだった方。自分が罹ったがんについての事実や情報を伝え手としてわかりやすく述べつつ、患者としての日常・気持ちや考え…

【本】エンド・オブ・ライフ(佐々涼子)

エンド・オブ・ライフ (集英社インターナショナル) 作者:佐々涼子 発売日: 2020/04/24 メディア: Kindle版 人が息を引き取った時、その命の閉じ方の見事さに、悲しむのではなく拍手をする。生前の勇気溢れる姿への賞賛と、次の旅路への無事を祈って、拍手で…

【本】Body Journey - 手あての人とセルフケア- (つるやももこ)

Body Journey ―手あての人とセルフケア― 作者:つるやももこ 発売日: 2020/04/07 メディア: 単行本(ソフトカバー) 体調が悪くなって行った病院が、漢方と西洋医学の両方をやっているところだった。そこで血液の病気だと言われ、「この病気には専門的な治療…