患者の生活実験室

白血病患者(寛解中)が能動的な患者として楽しく暮らしていくために試した諸々と、医療や身体に関する本の読書記録

【徒然】患者にもっと柑橘を!

久しぶりにはっさくを食べた。

実にしみじみといただいた。

 

というのも、入院中そして退院後も長期に渡り免疫抑制剤を内服していたわたしには、飲み合わせの関係でしばらく柑橘類の多くが禁止されていたのだ。


グレープフルーツに関しては比較的知られているかと思うが、はっさく、伊予柑、文旦などそのほかの柑橘類にも、薬によって要注意のものがある。

 

キーは「フラノクマリン」という物質の含有量だ。

 

すごく単純化すると、この物質を多く摂取するとそのあとに内服する薬の成分が体内で濃くなりすぎ、薬が効きすぎてしまったり、副作用が強くなってしまったりするのである。

 

要注意の薬と柑橘類の組み合わせについては、高の原中央病院さんのこちらの表が大変わかりやすい。

 

わたしは柑橘農家さんでのアルバイト経験があるくらいには柑橘好きなため、いろいろ食べられなくなると知ったときには少々落ち込んだ。免疫抑制剤の内服が開始する前に大好きな晩白柚や紅まどか、はっさくなど禁止になるものを食べ納めし、絶対に薬を終わらせてまた食べるぞと誓った。

 

次の冬、柑橘の季節がやってきた。温州みかんやポンカンはどんな薬とも問題がないが、それだけで納まるものではない。アルバイト中、農家さんで品種について教えてもらっていたわたしはさまざまな柑橘の系統を調べ、フラノクマリンの含有量がわかっているわけではないけども、食べても大丈夫そうな種類を推測した。

 

 品種についてわかりやすくまとめられている表なので拝借する。この表で分類されるところの文旦類、グレープフルーツ類、タンゼロ類、雑柑類などがアウト。そのほかは系統をたどり、これらの分類に入る柑橘が親だったりする場合は避ける。だいたいこのような方針で、食べられるものを考えた。

 

そして農家さんに相談し、「免疫抑制剤対応スペシャル詰め合わせ」を作ってもらって気持ちを収めた。

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そこからさらに1年が経ち、この冬が始まる前、わたしは免疫抑制剤の内服を終了することができた。はっさくや文旦類の収穫シーズンを狙って、わたしは農家さんに連絡した。紅まどかにはっさく。うれしい。


送っていただいたなかに、「(仮)有田ゴールド」という品種があった。

 

(仮)?(仮)ってどういうことですか?

 

農家さんからの返事はこうだった。

試作中で、まだ市場に出回っていない品種。系統は

メロゴールド(グレープフルーツ×文旦
=オロブロンコ(=スウィーティー)×
グレープフルーツ)×フロリダオレンジ

 

つまり、フラノクマリン満載の品種。

思わず笑ってしまった。

これはひと段落ついたわたしへの、彼一流のお祝いなのだ。

ありがたくいただいた。

 

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免疫抑制剤だけでなく、血圧や心臓病の薬でも、フラノクマリン要注意のものはたくさんある。どの柑橘がOKかというのは、わたしのように執念深い人間でもなければ、業界の方以外にはなかなか調べにくいのではないか。その結果、もうわからん、間違ったら困るとなって、ほとんど食べるのをやめてしまった方もいるのではないかと思う(わたしの母がそうだったように)。それは実にもったいないことだ。作る側にとっても、食べる側にとっても。

 

高齢化社会、また医療の高度化で、このような薬の飲み合わせによる禁止食品は増えているのではないかと察している。だからこそ、何であればそのような患者さんも安心して食べられるのか、業界側からもぜひ発信していただきたいと思う。新種であるとか、県の特産であるとか、患者が欲しい情報はそういうことではない。ある意味、これも食の安全性の問題なのだ。

 

そこにまた新しい需要も生まれるのではないだろうか。