患者の生活実験室

白血病患者(寛解中)が能動的な患者として楽しく暮らしていくために試した諸々と、医療や身体に関する本の読書記録

【徒然】運命は変えられるか

池江璃花子選手が、東京オリンピックの日本代表選手に内定した。素晴らしいことだ。心から応援したい。

内定決定時に彼女が涙とともに述べた「努力は報われると思った」が、本心からの言葉なのは疑いようもない。自国開催のオリンピックのエースと目されるなかで突然白血病と診断され、どん底を経験。厳しい治療を経て選手生活に復帰。トレーニングの末、コロナ禍で延期となっていたオリンピックの代表選手の座を掴む。このすべてへの感慨を「努力が報われた」という言葉に凝縮させたのは、ひとえに彼女がアスリートだからだろう。

そう、彼女がアスリートだからだ。出演しているSK-IIの#CHANGEDESTINYキャンペーン短編フィルムで、彼女はこう語る。

「何か一つのちょっとだけ違う行動だったり考えで、運命とか未来って簡単に変わると思っている。だから、いまこの瞬間をどう生きるか、どう大切にするかが、自分の人生において、誰の人生においても大切」

運命は、未来は、変えられると。


あえて言う。これは幸運なアスリートの言葉だ。1年で国内トップレベルまで戻してこられる天性の能力と努力できる才能、目標、心身ともに周囲のサポートがあり、またそれを邪魔するほどの後遺症や再発に見舞われなかったということ。しかもオリンピックが延期になったことで、結果的に間に合ってしまったということ。こんなにも条件が揃っている状況を、幸運と呼んではいけないだろうか。幸運なアスリートは、命運あわやと思われた状況から、努力を重ねて復活した。その彼女が語る言葉。

わたしも抗がん剤と骨髄移植を経験した身だ。なんなら二度。

だからあえて言う。運命も、未来も、自分では変えられない。それは確率のなかにある。どのような運命か、未来かは「さいころをふりつづけるしかない」。明日再発しない保証はないし、いきなり後遺症がひどくなる可能性はいつまでも消せないし、そもそも白血病に完治の概念はない。

運命の形も、それに向かう姿勢も、人の数だけある。誰も、誰かの代弁者になどなれない。

アスリートでも何者でもない、ただの白血病患者のわたしに言えるのは、「明日再発しようとも、今日を生きる」ということだけだ。