患者の生活実験室

白血病患者(寛解中)が能動的な患者として楽しく暮らしていくために試した諸々と、医療や身体に関する本の読書記録

【本】医療探偵「総合診療医」(山中克郎)

 

 

総合診療医の先駆的存在である山中医師による、総合診療の紹介。器官で分けるのではなく、心身の症状を文字通り総合的に観察し、その原因を探っていく。

「ただ見るだけでなく、変化に敏感になり、見たものを意識に載せて考察することが大事なのです」

しかし、所見のすべてが必ずしも重要というわけではない。正しい診断を下すためには「目くらましの情報にまどわされず」、「頭の中で情報の重み付けをして」、「それを生かす」ことが必要だ。

そのため著者は、研修医には、より合理的な鑑別は何かと大いに「妄想」し、絞り込みをしていく練習を奨励しているそうだ。そう、探偵のように。

総合診療にとって重要な情報とはどのようなものか。それを患者側も知り、それに基付いて問診を受けることで、診断へのプロセスがスムーズになる。

この本の良い点のひとつは、その情報がどういうものかまとめられているところだ。医者が診察時に使うチェックリストも掲載されている。信頼できる医者の見分け方や、全国の総合診療医ガイドもありがたい。

AIの存在が大きくなると同時に、その「巨大な知と患者さんの心をつなぐ総合診療医の役割は大きくなる」と著者はいう。それはつまり、まず「つらかったですね」と患者の手を握り共感することであると。「医療はサイエンスだけでは十分ではありません。患者さんを思いやるアートも必要です」という一文には頷くばかりだ。

サイエンスとアートを兼ね備えた実力ある若手医師が増えていくように心から願う。これこそ、医は仁術の体現者であろうと思う。